龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「ダンス練習は1週間もいりませんよ」

ヴァイスさんの声が聴こえると、令嬢方は一斉に振り向く。微笑んだ彼の言葉に、また非難が集中した。

「ヴァイス殿下、デビュタントダンスの難易度はご存知でいらっしゃいますでしょう?通常のワルツのステップではございませんのよ?1週間ではとても無理ですわ」

リリアナさんまで目をつり上げておっしゃる…せっかくの美貌が台無しですよ。

「そうですわ!難易度の高さから、早い方は何年も前から専用のコーチを付けてまでレッスンしますのよ」
「ヴァイス殿下は慣れてらっしゃるかもしれませんが、初めて踊る方には少なくとも半年間は必要ですのよ?」

マリナさんとカリンさんもおっしゃるデビュタントダンス…一体どんな難易度なんだろう?

「あの…ダンスならひと通りおばあさまに習ってますが」

あたしが片手を挙げて言い訳(?)しても、火に油を注ぐだけ。

「アリシアさん、普通の社交ダンスではだめですのよ?なにせ、デビュタントダンスは反対側に回らねばなりませんもの」
「それも、ステップがより複雑なのですわ」
「はぁ……」


あれ?それって……とあたしが首をひねっていると、ヴァイスさんが侍女や侍従に指示を出した。

「そこのテーブルと椅子を退かしてください。はい、では、メグ。ピアノを弾いていただけますか?」
「はい」

侍従がエントランスホール中央にあるテーブルとソファを退かすと、たちまち広い空間が出来上がる。そして、ヴァイスさんがあたしの前に跪いた。