なにか言おうと思うのに、胸が詰まったように言葉がうまく出てこない。塞がった気持ちみたいに。
「アリシアさん…」
リリアナさんがあたしの背中に手を回し、そっと抱きしめてくれた。たぶん、あたしの頬を温かいものが伝わっているからだろう。情けないけど、今は彼女の優しさに甘えよう。
「アリシアさん、大丈夫ですの?」
「このハンカチをどうぞ」
マリナさんとカリンさんまで心配してくれて、あたしを隠すよう周りを取り囲んでくれる。みんなの思いやりがぐっと胸に沁み入った。
しばらく泣いたらスッキリした。
こうして泣くなんて、ほんと子どもの頃以来だ。
あの時はおばあさまが厳しくて、毎日毎日謎の勉強や特訓をさせられてたからなあ。3歳から詰め込めるだけ詰め込まれて…。
なんてくだらないことを思い出せるのも、精神的に余裕が出来たからだろう。
(もう、クヨクヨしない!あたしはあたしらしく過ごそう。ヴァイスさんとも……お別れが決まったら、玉砕覚悟で告白して終わればいい)
フラれることは間違いないけど、グジグジ悩むよりスッパリ振られた方があきらめもつくだろう。
だったら、それまでは楽しもう。
偽でも恋人役を全うしてみせるんだ。
開き直ったら、なんだかスッキリした。



