龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


丘の上でふわりと風が吹いて光の粒が集まると、姿を現したのがシルフのシルフィーだった。彼女はいつになく焦った様子であたしに報告してきた。

《アリシア、大変!森に盗人が入ってきた!!ユニコーンが誘拐されてる!!》

「えっ、どこ!?」
《あっち!仲間たちが監視してる》

シルフィーが指した先は、おばあさまの結界の端の方。海に近い場所だった。
いつもは頑健なはずの結界の一部が綻んでる。そこから侵入したのか。

「結界が揺らいでる…侵入した密猟者ね。わかった!シルフィー、案内お願い」
《お安いご用よ!》

竜笛を吹くと、ほどなく紅い姿が飛んでやってくる。ファイアドラゴンのバーミリオンだ。

「バーミリオン、シルフィーを追って!」
《あいよ!》
「ヴァイスさん、すみませんが非常事態です。早く家に戻っていてください!」

バーミリオンの羽ばたきに合わせて丘の上を走ると、タイミングを合わせ彼の背中に飛び乗る。

《飛ばすぜ!しっかりつかまってろよ!!》
「お願い!」

バサバサッと数度大きく羽ばたいたバーミリオンは、そのまま猛スピードで羽ばたき始める。スピードを殺さないため、あたしもなるべく姿勢を低くして彼にしがみついた。

ものすごいスピードで周りの景色が流れていく。風圧で顔が痛くて呼吸ができないくらいだ。

でも、ユニコーンを助けないと!!