「……ありがとう」
ヴァイスさんはあたしの手に自分の大きな手を重ね、しばらく黙ったままだった。沈黙は耳に痛いけど……今は、なんとなくそれでいい。
しばらくして、ヴァイスさんがふたたび口を開く。
「自分は愚かでした……ですから、兄上やメローネばかり責めるつもりはありません。ですが、やはりアリシアには伝えておきたいです」
「あたしに…?」
真面目な顔であたしを見上げるヴァイスさんの目は、怖いくらいに真剣だ。なにかただならぬものを感じる。
「信じる信じないは、もちろんあなた次第です。いかようにも判断してください。私を疑い離れるも……自由です」
ヴァイスさんの言葉も、緊張を高めるものばかりだ。
覚悟して聴かないといけない……ということらしい。
それはきっと、知ってしまえばとんでもない事実。
自分が知ってしまって良いのか?という葛藤はあったものの、やっぱりヴァイスさんのことならばどんな現実でも知りたい……という強い想いがあって。腹をくくることに決めた。
「はい。大丈夫です。あたしはあたしできちんと考えて判断しますから。教えてください」
「……ありがとう。では、話しますね……それは、キルシェに関してです」
「キルシェちゃん……」
メローネさんの娘のキルシェちゃん。何度か会って一緒に遊んだりもしたけれど。
「キルシェちゃんが何か…?」
「彼女が、私にそっくりだと感じたことはありませんか?」
「!」
ヴァイスさんの指摘で、ピクッと身体が揺れた。



