そうだったんだ。
最初から完璧な王子様と龍騎士と思えたヴァイスさんなのに、本当は肉親とあまり過ごせなくて寂しかったんだ。
なぜか、自分の小さなころを思い出す。
あたしにはおばあさましかいなくて……でも、おばあさまは辺境の地を護ったり趣味に忙しい。もちろんいろんなことを教えてくれたり、コミニケーションを取る時間はあったけど。一人きりの時間が多くて…自然と辺境の地の生き物や幻獣達と仲よくなった。
おとぎ話と思われているような妖精たちや、ドラゴン、ユニコーン、ペガサス、セイレーン……。
森や山や海。あらゆる生命と仲よく遊んで育った。
だから、あたしにはあの地に生きるみんなが、家族であり仲間なんだ。
ヴァイスさんには…そんな仲間はいなかったのかな?だから、メローネさんに必要以上にのめり込んだのかもしれない。
なんとなくヴァイスさんを抱きしめたくなったあたしは、躊躇わず彼に手を伸ばして頭から抱きしめる。
「……ヴァイスさん。あたしは、あなたを裏切りません。あなたが望む限り、そばにいますから」
(きっとすぐ、別の好きな人ができてお役ごめんになるだろうけど……それでも、いい)
彼は、いついかなる時でも誠実であろうとしてくれている。なら、あたしも正直になろう。
「あなたがいらないというなら、あたしは今すぐにでも離れますからね」



