龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「そういえば、メローネさんは15の歳の夜にお兄様と通じてそのまま婚約した…と」

以前聴かされた話を繰り返せば、ヴァイスさんは「そうです」と肯定した。

「メローネは“寂しかったからだ”と言っていましたが、時期的に二股をしていたのは確かです。
私はプロポーズをして彼女も承諾をしていましたが…よく見たら、メローネの胸元には常にメダリオンがあったのです。彼女に夢中で顔しか見てなかったので気付くのが遅れましたが…あれは、兄上の肖像画でした。そして、兄上の胸元のメダリオンはメローネの肖像画…気付かず浮かれていた自分が馬鹿だったんです」
「メダリオン…」

あたしが意味がわからなくて胸元を見ると、ブローチにあるのはヴァイスさんの肖像画。カメオの見事な彫像だ。

「異性から自分の肖像画のメダリオンを贈ることは、求婚を意味します。そして、相手が自分の肖像画入りメダリオンを送り返してくれば、求婚が了承されたと見なされ晴れて婚約が成立するのです」

ヴァイスさんに説明されて、なんだか顔が熱を持つ。あたしの胸にあるメダリオンは……?

(バカみたい……本当に求婚されたわけじゃないのに)

「じゃあ…ヴァイスさんは当時メダリオンの意味は知らなかったんですか?」
「はい、まったく。メダリオンは先に贈った方が優先権があるとか…母上も父上も常に病弱な兄上優先でしたからね…私は二の次三の次でした。王子として最低限の養育はしてくださったのでその点は感謝しています。ですが、普通の王侯貴族なら当然知っている慣習や常識はほとんど知らなかった…その点では恨みましたね」