龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


なるほど、とあたしは納得できた。

「それで3人とも仲よく育ったんですね」
「はい。ですが、メローネは伯爵令嬢。私と兄上は王子。やがて、長ずるにつれて立場の違いが現れてきたのです」

ヴァイスさんの言うとおりだろうな。
あたしも数ヶ月俗世で過ごした今ではわかるけど、伯爵令嬢ならば王族とそう親しくはできないはず。

まして、アンテルム王子は王太子…将来の国王になるべき御方だ。妻になるなら将来王妃に。普通ならば伯爵令嬢は排除されるだろう。

喉が乾いたのか、ヴァイスさんはグラスを口にして続ける。
「兄上は王太子となるべく帝王教育を学び、メローネは伯爵令嬢として淑女教育を。私も王子として必要な教育は受けていましたが、なにか物足りなかった……ところで出逢えたのが、ドラゴンたちだったのです」
「ドラゴンに…?」
「はい。前々から興味はありましたが…その時は騎士になろうと武芸に打ち込んでいました。ですが、修行のために着いた騎士に“おまえは騎士より竜騎士に向いている”と言われましてね。なんとはなしに竜騎士団へ向かって…驚きましたよ。あれだけのドラゴンが普通に空を飛んでいる……衝撃でした。それまで、竜騎士団は単にドラゴンを無理に従わせ、盾にしたり自分の代わりに戦わせるだけの卑怯な仕事だと思っていましたからね」

ヴァイスさんのイメージはたぶん、知らないがゆえのものだったんだろう。あたしは思わず頷きながら言った。

「そうでしょうね。普通なら竜騎士やドラゴンに会うこともないでしょうし」
「はい。ちょうどクロップス卿とイッツアーリに会って、その背中に乗せてもらえたのです。素晴らしい体験でした」

ヴァイスさんの話に、あたしはショックを受けた。