龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「それは、不思議ですね」
「はい。ですから母上もまるで御自分の御子のように思われたのでしょう。物心ついた頃には3人でいるのが当たり前になっていました。伯爵夫人も母上付きの侍女でしたからね。それこそ私と兄上とメローネは兄妹や家族同然に育ちました」
「なるほど…」

だから、あんなふうに気安く遊びに来るんだ。
兄妹……あたしにはいないからわからないけど、たぶんおばあさまと同じような感じかな。 

一番大切な“繋がりがない”ことも一緒だけど。

ヴァイスさんは話を続けた。

「私と兄上は似てなくて、兄上は病気がちなこともありよくベッドに伏していました。私とメローネはふたりで野山を駆け巡り、よくやんちゃやいたずらをしては叱られていたものです。
で、その日のあった出来事をふたりで兄上に話すのが日課でしたが、兄上はとても楽しそうに聴いてくださいました」
「キルシェちゃんが幼い頃のメローネさんに似てるとおっしゃってた通りなんですね」
「むしろ、メローネの方が手を焼く暴れん坊でしたよ。今でこそお淑やかを気取っていますが、馬の尻尾をむしり取ったり…とにかく、気性が荒く負けず嫌いできかん坊でしたから」

そう話しながら懐かしそうに笑う彼を見るのが嬉しい。昔ばなしは辛いことより楽しい思い出の方がいいに決まっているから。