龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


セシリアは、おばあさまのパートナーであるドラゴン。紫の雫のような美しい鱗を持つ齢二千年の古代竜で、この辺りのドラゴンの頂点であるエニシェントドラゴンでもある。
セシリアほどのドラゴンとなると幻獣より更に上の聖獣となり、上の神獣に近づいてく。
下手な魔術師より膨大な魔力を持ち、高い知能で直に人間と会話が可能。普通ならば人と関わろうとしないけれども、おばあさまはお酒を酌み交わしただけで意気投合し盟約の契りを交わしたらしい。

「シルヴィア」
「クゥ」

竜騎士さんが名前を呼ぶと、降下したシルヴィアが甘えた鳴き声を出す。

「すまない、シルヴィア。私が不甲斐ないばかりにおまえまで危険な目に遭わせてしまった…え?それはない。私が油断したからだ。おまえにはなんの責任もないよ」

やっぱり、竜騎士さんはシルヴィアと心話が出来る。それだけ信頼と絆が強いってことだよね。あたしにも魔力はあるけれども、微々たるものだから無断で会話の内容は聴き取れない。おばあさまレベルの魔力なら安々と知れるんだろうけれど。

(いいなぁ、シルヴィアとお話できて…まぁ、たかが7日関わっただけじゃ無理なのは仕方ないけど)

あたしが羨ましそうに見ていたからか、振り返った竜騎士さんに苦笑いされてしまって恥ずかしくなった。

「ずいぶんシルヴィアと私がきみの世話になったようですね。ありがとうございす。本当に助かりました」
「い、いえ!あたりまえのことをしただけですから」

竜騎士さんの御礼の言葉に、思わず大げさなほどに手をぶんぶんと振ってしまってた。