龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


おだやかな会話が続いたけれども、やっぱりクロップス卿もその話は避けては通れなかったようだ。真面目な顔に戻った彼はあたしへ質問を始めた。

「さて、アリシアさん。竜騎士団の厩舎で手伝いをしているならば、このところ厩舎内で起きている事態を把握しているね?」
「はい。原因不明の体調不良を起こすドラゴンが続出していますよね。今、被害に遭っているのはイッツアーリを含めると386頭。ドラゴンならば通常自分で回復したり治癒ができますが…さすがにこれは不自然ですよね」  

あくまで冷静に。感情的にならず事実のみを淡々と述べた。ドラゴンたちを苦しめた犯人は許せないけれども、今あたしがここで怒ったところで犯人は捕まらない。

「その原因について、君は思い当たることがあるかね?」

クロップス卿に訊ねられ、あたしはさっき厩務員さんから預かったイッツアーリが摂取したウゴルを見せた。

「はい。ドラゴン達の症状は嘔吐や痙攣に筋力低下など…原因はまず間違いなくこのウゴルと思います」

あたしには、一切疚しいことはない。だから堂々としていればいい。
そう思ってクロップス卿の瞳をまっすぐ見ていると、彼は「ふむ」と顎に指を当ててそこを擦る。

「ちなみに、イッツアーリの好物は知っているか?」
「あ、はい。ウズラ肉ですよね」

なぜかそんな簡単な質問をされ、当たり前の答えを返すとクロップス卿は何度か頷いた。