「おまえだろ!イッツアーリに毒を盛ったのは!!」
イッツアーリにトルネリアを飲ませてすぐ、突然後ろから声を張り上げたのは、トムという厩務員。いつも苛ついて当たり散らしてくる人だ。
あたしを指差し、犯人扱いをしてくる。
「皆さん、聴いてくださいよ!おれは、こいつがドラゴンの食事にウゴルを混ぜるのを見ました!おれが止めても、余計なお世話と逆ギレして暴力まで……」
トムは顔に腕を当てて、泣いたふり。ずいぶん安い三文芝居だ。
だけど、今はまずい。
状況からあたしが疑われるのは仕方ないにしても、あたしをよく知らない人ならばちゃちい三文芝居でも信じてしまう。
「え、あの子がウゴルを?」
「そういえばヴァイス殿下の…」
「殿下のお金で悪どいことをしたのね」
「メローネ様への嫉妬でじゃない?みっともない」
やっぱり。有る事無い事好き放題言われる。
おまけに、竜騎士団長であるクロップス卿が愛龍イッツアーリの様子を見に来てた。
ヴァイスさんは間に合わなかったの?
「あ、竜騎士団長!実はですね…」
トムがこっそり耳打ちしてる。こちらをちらちら見て嫌な感じ。絶対、あたしが犯人って吹き込んでいるよね。
クロップス卿は短く「そうか」と言っただけで、トムのところからあたしのもとまで歩いてくる。



