「アリシア、大変だ!イッツアーリが…」
「えっ!?」
知り合いの厩務員さんが大慌てで呼びにきた。イッツアーリの名前が出たから嫌な予感がしたけど。
着いた先には、ぐったりして翼を伏せたイッツアーリの姿があった。いつもは高い岩場に座っているのに、今は厩舎のある平地にいる。
「イッツアーリ……一体どうしたんですか?」
「わからねえ。昼過ぎから様子がおかしかったんだ。飛び方も…なんかふらついていてな。で、ついさっき吐いたんだが……これが内容物から出てきたんだ」
手袋をはめた厩務員さんが手のひらに載せたものは、あたしの予想通りのものだった。
「……ウゴル!一体誰がイッツアーリに……」
「わからねえ。だが、最近イッツアーリを担当していたのはあんただろ?だから、そのう……言いたかないが、一部の連中が“アリシアが犯人だ!”と決めつけていてな。一連の事件もあんたがやったんじゃないか…って疑われているんだ」
「それは、あり得ません!……って言っても、あたしがやってないという証拠もありませんからね……いくら主張しても信用されないでしょう」
「い、いや!オレはあんたがやったとは思えないよ。ただ、状況からあんたが一番怪しいのは確かだし…」
厩務員さんは慌てて弁明してくれたけど…そりゃあそうだ。ここに来て2か月の小娘と、何年も働いてる職員。どちらを信頼するかと言われれば、圧倒的に後者だろう。そうでなきゃおかしい。
でも、今はそれどころじゃない。
「それよりも、これ…トルネリアです。早くイッツアーリにあげてください」
あたしが持つ最後のトルネリアを、厩務員さんに渡した。



