龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「すっかりお邪魔してしまいましたわ」
「いえ、またいつでもどうぞ」

結局、メローネさんは昼食もいただいてアフタヌーンティーが済んでからお暇していった。

あたしはキルシェちゃんの相手でくたくた。
体力に自信はあるけれど……3歳児のパワーは半端ない。あんなに振り回されるなんて。世の中のお母さんは毎日あんなことをしてるんだ…と考えただけで尊敬したくなる。

「お疲れさまでした」

長椅子でぐったり仰向けになっていると、クスクス笑いながらヴァイスさんがあたしにグラスを渡してくる。口にすると、乾いた喉にしぼりたての果汁と冷たい水が心地いい。

「……子どもって……すごいパワーですね……ドラゴンを相手にしてる方が楽です」
「仕方ありませんよ、キルシェはメローネの幼い頃に似て活発ですから」

ヴァイスさんがクスクス笑うのは、昔を思い出して?それともあたしが可笑しいから?

(メローネさんとあんなに長時間なにを話したんだろ……)

メローネさんが幼なじみの友達として訪れたなら、話は尽きないだろうけど。どうしてか、あたしは2人が2人きりでなにを話したか…なんて、気になってしまう。詮索する権利なんてないのに。

本当の恋人なら、なんのためらいもなく訊けたんだろうけど。
あたしは、所詮偽物に過ぎないから。