竜騎士さんと目が合ったおばあさまは、ズイッと手のひらを差し出してとんでもない発言をした。
「あ、アタシの見事な身体を見たね。ハイ、1億ラサン」
「おばあさま!自分で露出しておいてぼったくりやめなよ!」
「ひとを変態みたいに言うな。魔力の熱であっちいんだよ。服を着たら魔力の暴走で半径10kmが全部ぶっ飛ぶがいいのか?ん?」
「それならせめてよその部屋に行っててよ!」
「アタシの家なんだからアタシの勝手だろ」
「……お取り込み中すみません」
おばあさまとぎゃあぎゃあ言い合っていると、遠慮がちだけどはっきりした声が割り込んできた。
「どうやら助けて頂けたようで、ありがとうございます。ですが、近くにシルヴィアはいませんでしたか?白銀色の私の騎竜なのですが」
「あ、外にいます!あたし呼んできますね」
上半身を起こした竜騎士さんが問いかけてきたから、慌てて答えてから外に駆け出す。
(あの子、シルヴィアって言うんだ……素敵な名前)
白銀色のドラゴン……もといシルヴィアは、日中は外に出ている。身体を鈍らせないために、飛んだり食事をしているんだ。
(たぶんこの辺りにいるはず)
昨日は渓谷近くにいたから、今日は小山の辺りかな?とあたりをつけて腰に下げた革袋から笛を取り出す。
ドラゴンの鳴き声を模した音が出る竜笛だ。ただ吹けばいいというわけでなくて、種族毎の微妙な違いもあるから相当な練習が必要で、あたしも使いこなすには10年以上かかった。
“シルヴィア、オイデ。ナカマガヨンデイルヨ”
シルヴィアに向けて、そんな意味の笛を吹いた。



