龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「わぁ、おいしい!」

ショートブレッドをぱくんと口にしたキルシェちゃんがとても喜んでくれて、作ったかいがあったというもの。

「このおかし、はじめてたべるけどおいしいね」
(えっ!?)

キルシェちゃんの発言に違和感があって、思わず訊き返してた。

「あれ?……以前、差し上げたことがありましたよね?」

あの時会ったことは内緒とメローネさんに言われたけど、お菓子のことなら構わないはず…だから、初めてショートブレッドを差し上げた時のことを訊ねてみた。

「おかあさまが、“どくがあるから食べちゃだめよ”っておかしを捨てちゃったの」
「え……」

キルシェちゃんからとんでもない証言が飛び出して、一瞬信じらられない思いだった。

(メローネさんが……あたしがあげたお菓子を捨てた?)

あの優しげなひとが……と思うけど。つい先ほどの侍女の毒味を思い出して、もしかして警戒のためにそうなっただけかも知れない、と思い直す。

(そうだ。よく知らない他人から手作りお菓子なんて……ましてや、キルシェちゃんは王位継承者。毒物なんかの混入を疑われるのも仕方ない。無神経に思いつきで急にあげたあたしが悪いんだ)

考えてみれば、メローネさんは母親として当然の対応だ。とても責める気分にはなれなかった。