「いただきます!」
元気よく挨拶したキルシェちゃんは、お行儀よくジュースとおやつをいただく。
小さな手でスコーンを持って頬張る姿が可愛らしくて、ずっと見ていても飽きない。
「あ、ちょっと待っててくださいね」
スコーンにつけたクロテッドクリームがキルシェちゃんのほっぺたについてるのを見つけて、ハンカチで拭ってあげた。
「ありがとう、アリシアお姉ちゃん」
「いえ……スコーン好きなんですか?」
「うん、だいすき!」
ニコニコ笑顔でそう言われると…可愛すぎてあたしもなにかあげたくなってしまう。
(今からでもお菓子作ってこようかな…)
絶対、今のあたしは口元が緩んでる。その自覚はしっかりある。
「あ、そうだ」
ゴソゴソと腰に提げた革のカバンから革袋を取り出し、なかにある布の包みを侍女に差し出した。
「あの、よかったらこれ…ナッツとドライフルーツを入れたショートブレッドです」
「あなた様が作られたのですか?」
「はい」
「……ふむ」
侍女さんは包みを広げると、ショートブレッドを摘んで匂いを嗅ぐ。そして、ひとつぱくりと口にしてしばらく待ってから、それを指示してお皿に盛らせた。
「さすがにヴァイス殿下の想い人なれば、下手なことはされないでしょう」
(たぶん、今の毒味だよね?)
まだこんなにちっちゃいのに……王位継承権2位にもなると、警備も厳しいし行動を制限されるんだ。なんだか、気の毒になってくる。



