あたしが慌てて池に入り引き上げると、キルシェちゃんは楽しそうに笑い声を上げた。
「冷たい!カエルさんも気持ちいいね」
「そうですね。でも、殿下は風邪引いちゃいますから着換えましょうか」
そばに着いていた侍女がタオルを持ってきたから、身体を拭こうと一旦地面に下ろしたら、キルシェちゃんはスルリと抜け出して走りだした。
「わ、また緑色の虫!カエルさんみたいに跳ぶよ。ぴょん、ぴょん!」
池から拾い上げた帽子を手にした彼女は、ゆっくりゆっくりバッタへ近づいてく。しゃがんでタイミングを見計らい、帽子をバッタに被せた。
けど、どうやら失敗したらしい。
バッタは遠くへ跳んでいった。
「あ〜…」
残念そうなキルシェちゃんを抱き上げ、侍女の待つあずま屋に強制連行。他の侍女が用意した冷たい飲み物とおやつを見ると、ぱあっと顔が輝く。
「わぁい!おやつだ」
「ちゃんと身体を拭いて着換えてからですよ」
侍女に言われて渋々応じたキルシェちゃんは、ずっとお菓子から目を離さなくて笑えた。
そういえば、そろそろ11時のお茶の時間だ。
子どもは通常の食事だけでは足りずに、おやつで栄養補給するって聴いたことがある。
用意されたおやつはライ麦のスコーンにフルーツやナッツにキュウリとゆで卵のサンドイッチ。たしかに、砂糖やクリームたっぷりのお菓子より良さそうだ。



