龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?



よく茂った葉っぱの上にいる緑色の大きな虫を、キルシェちゃんは興味津々で覗いてる。

「アリシアお姉ちゃん、これなぁに?」 
「ああ、これはカマキリ。触っちゃ駄目ですよ」
「すごい!お手々が大きいんだね。わ!なんか大きくなったよ」
「威嚇ですね。自分の身体を大きく見せて、自分は強いんだぞ!とアピールしてるんです」

カマキリがカマを持ち上げて羽を広げる。キルシェちゃんは初めて見るのか、目をキラキラ輝かせた。

「カマキリさん、すごく強そう!」

両手を胸の前に当てて興奮気味だ。

「そうですね。カマキリは他の虫にとって強敵ですから」

で、キルシェちゃんはカマキリだけでは飽きたらず、目にするものすべてが物珍しそうで次々と“あれなあに?”と“なんで?”攻撃をしてきた。

「びょん、ぴょん!」

カエルを見つけた彼女は、カエルのジャンプを真似して後ろに着いていく。カエルが池に飛び込むと、しばらく残念そうに眺めていたけど。とんでもないことをやらかした。

「キルシェ殿下、暑いならそろそろ木陰で休みましょう…えっ!?」
「びょ〜ん!」

手を伸ばして彼女の手を掴もうとした瞬間、ザバン!と水音が響いて慌てて駆け寄ると、池の深さは30センチほどだったようですぐに顔を出す。

「ゲコゲコ〜!」

キルシェちゃんは満足そうに笑ったあと、犬かきで泳ぎだした。