「急に押しかけてしまって申しわけありませんわ」
さすがに内輪とはいえ王太子妃と王女の外出だからか、女官や侍女が何十人もついてきてる。
メローネさんは髪を結い上げ、膝丈の白いシンプルなワンピースと帽子。清楚な彼女によく似合う。キルシェちゃんは黄色のワンピースと帽子。
王太子妃を食堂や小さな談話室でもてなすわけにもいかないから、パンケットルームで歓談する。
今日は、あたしもヴァイスさんもお休みだ。
まさかそれを狙って…?
(いやいや、たまたまでしょう!悪く思わないの)
ぶんぶん、と首を横に振っていると、テーブルに置いた手に小さな手が触れてくる。
「アリシアお姉ちゃん、お外いこう!」
「あ、はい。あたしで良ければ」
満面の笑顔で幼子に誘われたら、拒む理由などないでしょう。
チラッとヴァイスさんを見ると、メローネさんと笑顔で話している。ちょっとだけ胸が痛むけれども……。
念のため2人へ報告しておいた。
「ヴァイスさん、メローネ妃殿下。キルシェ殿下に付き添ってお外へ行ってきます」
「まぁ、アリシアさん。申しわけありませんわ。キルシェがわがままを…」
「いえ、あたしも楽しみですから」
メローネさんは申しわけなさそうだったけれども、キルシェちゃんとの外出が楽しみなのは本音。
「キルシェ、困らせるようなわがままを言わないのよ?ちゃんといい子にしててね。危ないことはしないの。ほら、ちゃんと帽子を被って」
メローネさんは母親らしく、キルシェちゃんの服を直したり帽子を被らせたり、甲斐甲斐しくお世話をする。
そして、2人に見守られ中庭へ出た。



