龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「明らかに、ウゴルの混入の結果でしょうね」

朝食の席では、ヴァイスさんが難しい顔でそう呟いた。

「アリシアから頂いた情報や他の情報をもとに、ウゴル混入犯を追う調査をしましたが…なぜか途中でふっつりと痕跡が消えてしまうのです」
「……それは」

王子殿下であり龍騎士であるヴァイスさんすら、掴めない証拠。一体誰が関わっているんだろう?

あたしのなかでは、なんだか嫌な予感がする。

「失礼いたします」

古城の執事であるセバスチャンが一礼して食堂に入ると、主人であるヴァイスさんの耳もとで何やら話してる。

(なんだろう…なにか良くないことでもあったのかな?)

ヴァイスさんには珍しく、眉間にシワが刻まれている。彼にとって不本意な事態が起きたようだ。

額に手を当てたヴァイスさんは、ひとつ小さなため息をついた。

「アリシア」
「はい」
「……メローネと、その娘のキルシェが遊びに来るそうです」
「えっ!?」

驚いた…ほどではないか。
メローネさんは以前も入院したヴァイスさんのお見舞いに来ていたし、何より幼なじみ。
今は王太子妃なのだし、気楽に出歩けないけれども。ヴァイスさんのところになら友達として訪問も不自然……ではないのか?どうも王宮の仕来りに疎いあたしにはよくわからない。