「一体私の何が問題なの? 毎回理由を尋ねても皆答えてくれないわ」
何が問題だったのか、直すところがあるのなら次へ活かすためにも知りたいところではある。
しかし、誰一人としてアリシアの悪いところを指摘してくれない。
毎回返ってくるのは「君は悪くない」という言葉だけ。こちらが悪くないのなら何故婚約を破棄してくるのか。言葉と行動が矛盾しているので不満は増すばかりだった。
「お父様に婚約が破棄になったと手紙で報告しないと。……どうせ、読んでくれないだろうけど」
アリシアの父であるユラ公爵は国王の右腕として国政で辣腕を振るっているが、それ以外のことには一切関心がない。それは娘であるアリシアも同様だ。
唯一関心があるのは時期公爵となるアリシアの兄のみ。その証拠に兄が留学で外国の魔術学院へ旅立ってからは一度も屋敷に帰ってこない。
とはいっても、公爵家を発展させるために娘にはそれなりの身分の相手と結婚をさせようと最初のうちは縁談に力を入れてくれていた。が、毎回アリシアが婚約破棄という残念な結果を出しているせいで呆れられ、今は執事が婿探しをしてくれている。
アリシアが侍女にレターセットを用意させていると執事がテラスにやってきた。
「お嬢様、エンニエス辺境伯がお見えです。如何なさいますか?」
「まあ、ジェラール様が!?」
アリシアは席から立ち上がるとスカートの裾を少し持ち上げて、はしたないと言われない速さで居間へと駆ける。



