「そう。私はあなたに狂わされている。狂おしいほど愛している」

 瞳に狂気の色を滲ませるジェラールはニナに覆い被さると組み敷いた。
 必死に抵抗をみせるニナだったが当然ジェラールには敵わない。

「正直いつ転生してくるのか不安だったが、早いうちにアリシアとして生まれ変わってくれて心の底から嬉しい」
「こ、こんなの間違ってるわよ! アリシアに、あの子に真実を伝えないと!!」
「残念だがアリシアには魔力がないから真実は伝えられないな」

 ジェラールは愉悦に浸る。それから真顔になると静かに言った。
「ニナは魂の記憶の残滓に過ぎない。アリシアを止めたくてももう結婚もしてしまったし、どうすることもできない。君は潜在意識を使って必死に呼びかけていたみたいだが、無駄だった」
 ジェラールはニナの額に人差し指と中指を当てると呪文を唱える。

「このっ……最低おと、こ……」
「さよならニナ。もう会うこともないだろう。君の生まれ変わりのアリシアは絶対に手放さないから」
 ククッと喉で笑ったジェラールはニナの口を塞ぐ。



「んう……あれ、私」
 次に声を上げたのは雛鳥のようにあどけない表情を浮かべるアリシアだ。
「結婚式で少し疲れたみたいだな」
 アリシアはぱっと顔を赤らめると涙目になった。

「ご、ごめんなさい。ジェラール様。私ったら眠ってしまっていたの?」
「そんなアリシアも堪らなく可愛い。それに夜はまだ長いから心配するな。……おいで、私の可愛いアリシア」
「はい、ジェラール様」

 アリシアは頬を染めると愛おしいジェラールに抱きつき、身を委ねるのだった。