様々な追跡魔術を駆使してジェラールはニナを探した。最終的に魔術学院併設の魔術具研究所に勤めていることを突き止め、執拗に付きまとうようになった。
 精神的に追い込まれていたニナは、実験の最中に誤って爆発事故を起こし瓦礫の下敷きになって死んでしまった。


 身体の震えを覚えたニナはぎゅっと拳に力を入れる。
「瓦礫の下敷きになった時思ったわ。人生をまっとうできないのは悔しいけど、やっとあなたから解放されるんだって。なのにまさかアリシアにまで執着するなんて!」
「知らなかったか? 私はあなたの魂に惹かれている。今度こそ手に入れてみせると誓った」
「だからアリシアの家族を脅してわざと彼女を孤立させたの?」
「脅すだなんて人聞きの悪い。私はアリシアが生まれてすぐに彼女を花嫁にと公爵へ申し出た。だが、公爵は自分とさほど歳の変わらない私と結婚させるのは心底嫌だったようだ。だから年の近い令息と結婚できなかった時は私との結婚を許して欲しいと提案した。随分紳士的だろう?」
「紳士的なんかじゃないわ。令息たちを裏で脅迫して婚約破棄させるように仕向けたでしょう」
 ニナが追及するとジェラールはあっさりと頷いた。

「アリシアが私以外のものになるなんて許せない。どんなに逃げようと私は絶対手に入れる。そのために自分の左目や臓器の一部と引き換えに魂へ追跡の刻印までしたんだ」
 ジェラールは恍惚とした瞳でニナを見つめた。
 ニナはさらに顔を青くして「狂ってる」と震える声で呟いたが、それはジェラールを喜ばせるだけだった。