いろんな初めてまでの道のりは長いけど、絶対甘い。

 ……やっぱり私、意気地なしだ。

 好きな人に遠慮なんてするものじゃないと思うのに、どうしても言えない。

 相手が好きな人、だからかもしれない。

 どうしよう……このまま言わないほうが、良いのかな。

 そんな考えも浮かんできて、きゅっと下唇を噛む。

「……やっぱり変だよ、桃奈ちゃん。」

 私がずっと黙っていたから、痺れを切らしたように琴巴君が尋ねてきた。

 抱きしめていた腕を解き、私の頬を撫でる。

 両手でふわっと包むと、少しだけ強引に視線を合わせられた。

「悩み事とかあるなら、黙ってないで教えて。桃奈ちゃんだけが思いつめる事じゃないはずだから。」

「……っ、ことは、くんっ。」

「どうしたの、桃奈ちゃん。」

 あぁもう、ダメだ。

 そう思った時には涙が零れてしまっていて、手が無意識に震えていた。

 それを琴巴君は鬱陶しく思わず、優しく背中をさすってくれた。

 琴巴君の行動で、また涙が嵩を増す。

 でも、いつまでも泣いてたって琴巴君に迷惑がかかるだけ。

 分かっていたから、手と同様に震えている唇をゆっくりと開いた。