その時、プリントを持ってきてくれたのが琴巴君だった。

『洲上さん、大丈夫……?』

『……うん、大丈夫だよ……こほっ。』

『あ、やっぱり大丈夫じゃないよね……今日はもうすぐに寝て。ごめんね、体調悪いのに持ってきちゃって。』

『ううん、私のほうこそ……来てくれて、ありがとう。プリント、貰うね。』

 嬉しかった。私の体調を気にしてくれる人が、クラスの中に居たんだって。

 中学生時代の私は眼鏡をかけていて、ファッションにも疎くて、いわゆる地味子だった。

 でもこの時は風邪を引いていたし、家の中だったから眼鏡をかけなくてよかった。

 私は、自分に自信がなかった。だから隠すように、前髪も伸ばしていたんだけど……変わろうと思ったんだ。

 その理由が、琴巴君。

『お家に誰か居るかな? 今の洲上さん、ほっとけないよ。今にも倒れちゃいそうだし。』

『……居ないよ。お仕事、行ってるから一人。』

『一人で、大丈夫? 部屋まで行ける?』

 そう言われた時、もう帰っちゃうの?って思っちゃった。