「あはは、驚きすぎじゃない? 俺、変な事言ってないよね?」

 いえいえ、あなた今変な事言いましたよ。

 ……私の名前が、尊君の口から出たんですよ。

 そんなの、変な事以外何物でもない。

「な、ななななにか、わ、私に用ですか……?」

「……うん、用だよ。福本さんじゃなきゃ、ダメな用。」

「……へ?」

 私、じゃなきゃ……? どういう事?

 尊君、私に用なんて一体何事……!?

 二年生に上がってからクラスメイト以外接点がなくなったから、尊君が私に話しかけるなんて前代未聞。

 ……しかし、この状況はよろしくない。

「あの……み……い、伊集院君……近い、です。」

 目の前に推しが居るという状況は、心臓に悪影響。

 しかも結構な至近距離だから、余計に。

 手を伸ばせば、容易に触れられるくらいの距離。

 私は少し残っている頼りない理性を働かせ、訴えた。

 そうすれば、頭のいい尊君は分かってくれると思ったんだ。

 ……そしてそれが、ダメだったらしい。

「福本さん……ううん、君は俺のストーカーだから距離が近い事くらい平気でしょ?」