はぁぁぁ……今日も推しが尊い……。

 教室内で一点を見つめながら、私はそれはそれは大きなため息を吐き出した。

 私、福本里衣沙(ふくもとりいさ)。どこにでもいそうな普通の高校二年生。

 そして視線の先に居る、伊集院尊(いじゅういんみこと)君の……――ストーカー。

 もちろん非公認。ストーカーはこそこそしてなんぼだからね!

 私が尊君のストーカーになったきっかけは、去年同じ委員会になった事。

 その時にたっくさん優しくしてもらって、無事惚れた……というわけ。

 私は今や尊君ファンクラブの会長を務めていて、誰よりも尊君への愛が大きいと自負している。

 ……それが行き過ぎた結果が、今の現状。

 尊君にバレるわけにはいかない。だってバレたら怒られちゃうもん。

 ストーカーだといっても、家を特定したり家族構成を調べたり、尊君と同じ小学校や中学校だった人に当時の尊君の様子を聞いて回ったり……しかしてない。

 盗撮とか、尊君に害がありそうな事はしていない。それが尊君への愛の形だから。