昼休み。


「いいですか、明日の十八時までに『パートナー』を決めなければ、あなたは退学ですよ!」

「……はい」


 ビシッと、真っ赤なネイルをした人差し指を突きつけられて、私は下を向くことしか出来なかった。

 後頭部できっちり一つに纏められた髪の毛は、後れ毛一つない。
 彼女は、私の担任教師である百合先生。


「まったく今年の一年生は、まだパートナーが決まっていない生徒が三人もいるなんて。……私は授業の準備がありますので、失礼します。いいですか辻村さん、明日の十八時までですよ」


 そう言い残し、生徒相談室を出て行く百合先生。私は、背もたれにつけないように伸ばしていた背中を丸めて、はぁと息をはく。


「明日までになんて、絶対に無理……どうしよう!」


 私、辻村風花(かざは)が、なぜ頭を抱えているのか。

 それは、私が『稀血(まれち)の持ち主』だからだ。

 この春入学した、朱華(しゅか)学園。
 ここは『普通の学校』じゃない。
 稀血と呼ばれる特別な血を持つ人間と、その血を吸う吸血鬼が通う全寮制の学園。

 中高一貫校で、私は高校から編入してきた。


 この学園はパートナー制度がある。
 稀血の人間に対し、一人以上の吸血鬼をパートナーとして選ばなければならない……んだけど。

 入学して一ヶ月が経っても、まだパートナーが決まっていない私。
 そりゃもう、先生達からは問題児だと思われている。


 私にだって、パートナーを選べない理由があるのに……!


「入学して早々、退学になりそうなんて……とてもじゃないけど、お母さんとお父さんには言えないよ……!」


 そもそも、好きでこの学園に入学した訳じゃないのだ。