「――よかった。いつもの慧くんに戻って」

「当たり前だろ。俺がヴァンパイアの野蛮な本能に負けるわけがない」


と、整った顔に余裕の表情を浮かべた――けれども、ちらっと青空を見上げて息を吐く。


「――と言っても、今だって抑えるのに必死だよ。月は昼間も出ているから」


……そうだよね。

太陽の光がどんなに眩しくても、月が消えることはない。

お日様のようにどんなに明るく人間たちのなか輝いていても、慧くんがヴァンパイアである事実が消えないように。


「本音を言うと――」


不意に慧くんが私の耳元に唇を寄せて囁いた。


「今だってウズウズしてる。おまえの首に噛み付きたくてたまらなくて」


その低く色っぽい声にぞくりとする。

思わず顔を赤くして見やると、慧くんはやさしい笑顔を浮かべていた。