俺がやられてから十日ほど経った頃、少年課の刑事 谷村啓太郎が岩谷さんに会いに来た。 「課長からの託を、、、。」
「課長から?」 「そうです。 例の事件なんですが、、、。」
谷村刑事は課長のメモを取り出した。 「攻撃したと思われる男4人は現在逃亡中。 一人は岩島裕作であることが分かった。」
「岩島?」 「心当たりでも?」
「やつは昔、獄導の仲間だった男ですよ。」 「なんだって?」
「しかも大沼さんの前の総長 武村さんに歯向かって追い出されたやつです。」 「なんとまあ、、、。」
岩谷さんは古いメモを取り出して捲り始めた。 「ほら、この男ですよ。」
「確かにな。 ではなぜこいつが、、、?」 「分かりません。 理由として考えられるのは獄導への恨みかと、、、。」
「恨み化。 じゃあ君たちも狙われる可能性が有るのでは?」 「どうだろうなあ。 武村さんには恨みも有るでしょうけど、俺たちには、、、。」
「無いとは言えないよ。 気を付けるんだな。」 「分かりました。 ありがとうございます。」
岩谷さんは結城を呼んで松尾の事務所へ向かった。 「なんだって? 岩島裕作が?」
「そうらしい。 だちをやったのはこいつら4人なんだ。」 「ほんとかよ? やべえなあ。」
「どうしたんっすか?」 「だって岩島と言えば親は市議会議員だぞ。」 「まずいなあ。 警察でも動かされたら、、、。」
「だろう。 まあ、俺もそうさせないように抑えるけどさ、、、。」 松尾も真剣な顔である。
「岩島といえば高中雄一には逆らえないとか聞いたことが有る。」 「高中?」
松尾も岩谷さんも思わず顔を見合わせてしまった。
高中といえば市議会でも議長を長年任されてきた男だ。 そいつに逆らえないとなると厄介だ。
「そいつは厄介だな。 高中といえば市議会議長だぞ。 下手に逆らえば首が飛んでもおかしくない。」 「そうですね。」
「となるとだな、こいつは調子に乗って次のターゲットを狙ってくる可能性だって有るんだ。」 「次のターゲット?」
「そう。 前の総長、あるいは大村。」 「そうなったらますますやばいことになりますよ。」
「獄導が解散した以上、グループをまとめるのは難しい。 下手すればバラバラに攻撃されることになるだろう。」
松尾の事務所を出た二人は大村さんと話し合うことにした。 「何だって? 岩島が?」
「そうなんだよ。 少年課の調べでもやっとそこまで分かったらしい。」 「岩島は静岡に行ってたはずだぞ。」
「静岡?」 「そうだ。 向こうの専門学校に行くとか言ってな。」
「専門学校に?」 「ああ。 こっちでも通えたんだけど教師に仲の悪いやつが居るとか、、、。」
「親だ。 親が動いたんだよ。」 「あいつは誰にでも噛み付いてくるって評判だからなあ。」
「俺のだちの親もあいつに相当叩かれまくったんだ。 許せないよ あいつは。」 「大沼さんもっすか、、、。」
三人はコーヒーを飲みながら窓越しに通りに目をやった。 ハーレーが唸りを上げて突っ走っていった。
「ハーレーか。 俺も乗ってみたいなあ。」 「あのバイクは化け物だぞ。 やめとけよ。」
岩谷さんは苦笑いをしてコーヒーを飲んだ。 だが、警邏隊の車が走って行ったのを見て外を見た。
「警邏隊だ。 誰かを追い掛けてるぞ。」 「誰かって誰だよ?」
「さっきのハーレーじゃないのか?」 「ハーレーの男ですか?」
「確かにあいつはやばそうな顔してた。 誰なんだろう?」
岩谷さんは部屋を出ると辺りを見回した。 「こっちは高中の家のほうだな。 まずいことにならなきゃいいけど、、、。」
吉原町から川野原町へ向かって警邏隊が走って行ったことを考えるとどうも落ち着かないのである。 「あの男は次に誰を狙うんだろうか?」
そこへ結城も出てきた。 「何か思い当たる節でも?」 「こっちは高中の家のほうだよな?」
「確かにそうだけど、、、。」 「やつが動くと面倒なことになるぞ。」
「そうだね。 それはやばいな。」 二人が思案に暮れているところへ大村が出てきた。
「何してるんだ? あのパトカーと高中は関係無いよ。」 「何で言い切れるんだ?」
「だってサイレンを鳴らしてなかったじゃないか。」 「それはそうだけど、、、。」
「今な、警邏課に聞いてみたんだ。 そしたら訓練中だってさ。」 「訓練中か。」
二人はまたまた顔を見合わせてしまった。
その夜、岩谷さんは仕事を終えてブラブラと歩いていた。 「ここも寂れちまったなあ。」
20年ほど前なら飲み屋街だった一角を歩いている。 壊れたネオンが雨に晒されている。 看板も錆び付いて倒れ掛かっている。
昔なら何件も軒を連ねて客引きが威勢よく声を掛けていた。 道を歩く連中もまだまだ若かった。
あっちでこっちで女たちも愛嬌を振り撒いてたっけな。 フィリピン人のホステスを雇っているバーも有ったっけ。
「俺も何軒か飲んで回ったなあ。 あれも思い出になっちまったか。」 【ビーナス】という看板が転がっているのが見えた。
ここは岩谷さんと大村さんが出会った場所、、、。 ママは70近いばあさんだった。
「まあまあ、元気いいわねえ。」 水割りを運びながらママは二人をしげしげと見やるんだ。 「いいかい。 犯罪者になっちゃダメだよ。」
飲みに来るたびにママは岩谷さんにそう忠告したという。 「何で?」
そう聞き返した岩谷さんにママは息子の話をしてくれた。
「私に跳ね40になる息子が居るんだ。 でももうこの世では会えないんだよ。」 「この世では会えない?」
「何かの事件に巻き込まれた挙句に警官を二人も殺してしまったんだ。」 「じゃあ今は、、、。」
「想像しておくれよ。」 それだけ言ってママはカウンターの奥に引っ込んでしまった。
あの後、息子だという男は処刑されてしまった。 「だからあんな風に言ってたのか。」
それからしばらくして【ビーナス】も閉店してしまった。 今は看板だけが残っている。
「やりきれなかったろうな。 事件さえ無かったら息子さんも働いてたんだろうからな。」
閉店から5年ほどしてママも死んだことをホステスから聞いた。 岩谷さんはコップを前に置いて合掌したという。
その頃、獄導は全盛期だった。 「まるでワイルドセブンみたいだ。」って言われていた。
怖い物知らずの鈴木登也が居た。 冷静沈着な加藤大助が居た。
そして大村さんと岩谷さんが居た。 当時はまだまだ狼は結成したばかり。
だから迂闊に手を出してくることは無かったんだ。 負けるのは確実だったから。
狼が立ち向かってきたのはそれから5年ほどしてからの話だ。 いきなり事務所に殴り込んできやがった。
登也は男たちを圧し留めようと必死だった。 「何をやってんだ? 分かってんのか?」
「何も分かってねえのはお前たちのほうだ! 死んでもらうぜ!」 男たちは勢いに任せて暴れ回った。
やがて警察が飛んできて警官まで入り乱れての大乱闘に発展した。 凄まじい乱闘だった。
その中で登也が死んだんだ。 狼は何人も逮捕者を出して解散寸前にまでなった。
その狼を復活させたのが小林泰司。 こいつはスナックを何軒も持っているやつだ。
ホステスにも情報通が居たらしいね。 獄導の情報も漏れなく伝わっていた。
それに危機感を持った大村さんは狼に潜り込んだ。 そして岩島を引き抜いたんだ。
そこまでは良かったんだが、岩島は後で裏切ることになる。
「課長から?」 「そうです。 例の事件なんですが、、、。」
谷村刑事は課長のメモを取り出した。 「攻撃したと思われる男4人は現在逃亡中。 一人は岩島裕作であることが分かった。」
「岩島?」 「心当たりでも?」
「やつは昔、獄導の仲間だった男ですよ。」 「なんだって?」
「しかも大沼さんの前の総長 武村さんに歯向かって追い出されたやつです。」 「なんとまあ、、、。」
岩谷さんは古いメモを取り出して捲り始めた。 「ほら、この男ですよ。」
「確かにな。 ではなぜこいつが、、、?」 「分かりません。 理由として考えられるのは獄導への恨みかと、、、。」
「恨み化。 じゃあ君たちも狙われる可能性が有るのでは?」 「どうだろうなあ。 武村さんには恨みも有るでしょうけど、俺たちには、、、。」
「無いとは言えないよ。 気を付けるんだな。」 「分かりました。 ありがとうございます。」
岩谷さんは結城を呼んで松尾の事務所へ向かった。 「なんだって? 岩島裕作が?」
「そうらしい。 だちをやったのはこいつら4人なんだ。」 「ほんとかよ? やべえなあ。」
「どうしたんっすか?」 「だって岩島と言えば親は市議会議員だぞ。」 「まずいなあ。 警察でも動かされたら、、、。」
「だろう。 まあ、俺もそうさせないように抑えるけどさ、、、。」 松尾も真剣な顔である。
「岩島といえば高中雄一には逆らえないとか聞いたことが有る。」 「高中?」
松尾も岩谷さんも思わず顔を見合わせてしまった。
高中といえば市議会でも議長を長年任されてきた男だ。 そいつに逆らえないとなると厄介だ。
「そいつは厄介だな。 高中といえば市議会議長だぞ。 下手に逆らえば首が飛んでもおかしくない。」 「そうですね。」
「となるとだな、こいつは調子に乗って次のターゲットを狙ってくる可能性だって有るんだ。」 「次のターゲット?」
「そう。 前の総長、あるいは大村。」 「そうなったらますますやばいことになりますよ。」
「獄導が解散した以上、グループをまとめるのは難しい。 下手すればバラバラに攻撃されることになるだろう。」
松尾の事務所を出た二人は大村さんと話し合うことにした。 「何だって? 岩島が?」
「そうなんだよ。 少年課の調べでもやっとそこまで分かったらしい。」 「岩島は静岡に行ってたはずだぞ。」
「静岡?」 「そうだ。 向こうの専門学校に行くとか言ってな。」
「専門学校に?」 「ああ。 こっちでも通えたんだけど教師に仲の悪いやつが居るとか、、、。」
「親だ。 親が動いたんだよ。」 「あいつは誰にでも噛み付いてくるって評判だからなあ。」
「俺のだちの親もあいつに相当叩かれまくったんだ。 許せないよ あいつは。」 「大沼さんもっすか、、、。」
三人はコーヒーを飲みながら窓越しに通りに目をやった。 ハーレーが唸りを上げて突っ走っていった。
「ハーレーか。 俺も乗ってみたいなあ。」 「あのバイクは化け物だぞ。 やめとけよ。」
岩谷さんは苦笑いをしてコーヒーを飲んだ。 だが、警邏隊の車が走って行ったのを見て外を見た。
「警邏隊だ。 誰かを追い掛けてるぞ。」 「誰かって誰だよ?」
「さっきのハーレーじゃないのか?」 「ハーレーの男ですか?」
「確かにあいつはやばそうな顔してた。 誰なんだろう?」
岩谷さんは部屋を出ると辺りを見回した。 「こっちは高中の家のほうだな。 まずいことにならなきゃいいけど、、、。」
吉原町から川野原町へ向かって警邏隊が走って行ったことを考えるとどうも落ち着かないのである。 「あの男は次に誰を狙うんだろうか?」
そこへ結城も出てきた。 「何か思い当たる節でも?」 「こっちは高中の家のほうだよな?」
「確かにそうだけど、、、。」 「やつが動くと面倒なことになるぞ。」
「そうだね。 それはやばいな。」 二人が思案に暮れているところへ大村が出てきた。
「何してるんだ? あのパトカーと高中は関係無いよ。」 「何で言い切れるんだ?」
「だってサイレンを鳴らしてなかったじゃないか。」 「それはそうだけど、、、。」
「今な、警邏課に聞いてみたんだ。 そしたら訓練中だってさ。」 「訓練中か。」
二人はまたまた顔を見合わせてしまった。
その夜、岩谷さんは仕事を終えてブラブラと歩いていた。 「ここも寂れちまったなあ。」
20年ほど前なら飲み屋街だった一角を歩いている。 壊れたネオンが雨に晒されている。 看板も錆び付いて倒れ掛かっている。
昔なら何件も軒を連ねて客引きが威勢よく声を掛けていた。 道を歩く連中もまだまだ若かった。
あっちでこっちで女たちも愛嬌を振り撒いてたっけな。 フィリピン人のホステスを雇っているバーも有ったっけ。
「俺も何軒か飲んで回ったなあ。 あれも思い出になっちまったか。」 【ビーナス】という看板が転がっているのが見えた。
ここは岩谷さんと大村さんが出会った場所、、、。 ママは70近いばあさんだった。
「まあまあ、元気いいわねえ。」 水割りを運びながらママは二人をしげしげと見やるんだ。 「いいかい。 犯罪者になっちゃダメだよ。」
飲みに来るたびにママは岩谷さんにそう忠告したという。 「何で?」
そう聞き返した岩谷さんにママは息子の話をしてくれた。
「私に跳ね40になる息子が居るんだ。 でももうこの世では会えないんだよ。」 「この世では会えない?」
「何かの事件に巻き込まれた挙句に警官を二人も殺してしまったんだ。」 「じゃあ今は、、、。」
「想像しておくれよ。」 それだけ言ってママはカウンターの奥に引っ込んでしまった。
あの後、息子だという男は処刑されてしまった。 「だからあんな風に言ってたのか。」
それからしばらくして【ビーナス】も閉店してしまった。 今は看板だけが残っている。
「やりきれなかったろうな。 事件さえ無かったら息子さんも働いてたんだろうからな。」
閉店から5年ほどしてママも死んだことをホステスから聞いた。 岩谷さんはコップを前に置いて合掌したという。
その頃、獄導は全盛期だった。 「まるでワイルドセブンみたいだ。」って言われていた。
怖い物知らずの鈴木登也が居た。 冷静沈着な加藤大助が居た。
そして大村さんと岩谷さんが居た。 当時はまだまだ狼は結成したばかり。
だから迂闊に手を出してくることは無かったんだ。 負けるのは確実だったから。
狼が立ち向かってきたのはそれから5年ほどしてからの話だ。 いきなり事務所に殴り込んできやがった。
登也は男たちを圧し留めようと必死だった。 「何をやってんだ? 分かってんのか?」
「何も分かってねえのはお前たちのほうだ! 死んでもらうぜ!」 男たちは勢いに任せて暴れ回った。
やがて警察が飛んできて警官まで入り乱れての大乱闘に発展した。 凄まじい乱闘だった。
その中で登也が死んだんだ。 狼は何人も逮捕者を出して解散寸前にまでなった。
その狼を復活させたのが小林泰司。 こいつはスナックを何軒も持っているやつだ。
ホステスにも情報通が居たらしいね。 獄導の情報も漏れなく伝わっていた。
それに危機感を持った大村さんは狼に潜り込んだ。 そして岩島を引き抜いたんだ。
そこまでは良かったんだが、岩島は後で裏切ることになる。



