冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



交流会の数日前、一緒に帰ったあの日を堺に、わたしと伊吹くんとの関係に少しの渦が生まれたよう気がする。


その原因は、大いにわたしにあるのだけど……。


美結ちゃんと講堂の入口まで行き、抜け出していたことを知られないようこっそりと中に足を踏み入れる。


講堂では、わたしが出て行った前よりもより一層盛り上がっていて、少しずつ交流が行われているのが分かる。



「彩夏!どうしよう、私たちも話しかけなきゃ……!」



美結ちゃんがわたしの肩をバシバシと叩く。それが意外と痛い。まぁ、華奢に見えて実は力が強いところも可愛くて好きなのだけれど。



「…そ、そうだね」



美結ちゃんのためにも、わたしも御曹司様のところへ行かないといけないんだけど、どうしても伊吹くんのことが気がかりだ。


また、あの時と同じ怖い伊吹くんに変わってしまうのかと想像しただけで、顔が青くなる。



「あ…っ、あのお方、今お1人だ!彩夏、話しかけに行こっ」

「え……っ、でも」