冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



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伊吹くん、わたしを探したりしてないかな……?


わたしが少しの間講堂を抜け出していたこと、気づいているのかな……。


もし後からそのことを伊吹くんに聞かれたらどうしよう、とわたしの焦りは募るばかり。


まさか、この街の支配者である飛鳥馬様と今夜会う約束を取り付けられてしまったなんて言ったら、伊吹くんはきっと怒ってわたしをあの方の場所には行かせてくれないのだろう。


もちろん、わたしも行きたくないけれど……。何をされるのか想像しただけで、身の毛がよだつくらいの恐怖に襲われる。


だけど、皇帝の命令は絶対だ。もしも逆らったりしたら、その日の内にわたしはあの世行きだろう。


付き合っていることをこの高校の生徒全員に、しかも理事長にまで隠し通さなきゃいけないんだから、きっと伊吹くんは話しかけてこない。


少なくとも、……放課後までは。


今日の放課後のことを考えただけで、気が重くなった。


今のわたしには、伊吹くんに対して純粋に好きだと言える自信がない。というか、思えない。