冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



「あやかー……っ!どこに行ったのー!?いたら返事してー…!」



この可愛らしい高い声……、美結ちゃんだ。その声の後から、パタパタと上履きが床に擦れる音が聞こえてくる。


呆然状態だったわたしはその声と足音ですぐに我に返り、口を開いた。



「…っ、み、美結ちゃん!」



わたしがいないことに気づいてわざわざ探しに来てくれたのかな……、申し訳ないっ。


小走りで美結ちゃんの声がした方へ向かう。



「あっ、彩夏!いたぁ、やっと見つけられたよ~!」



わたしを探して廊下を走っていた美結ちゃんと目が合って、どちらからともなくほっとした表情になる。



「美結ちゃ〜ん…!ごめんね、わざわざ…」

「もうっ、どこに行ってたの!1人じゃ御曹司様に話しかけられないから彩夏のとこに行こうと思ったのにいないんだもん。心配した!」

「うぅ、ごめんね美結ちゃん…〜!」



美結ちゃんが朝頑張ってセットしたカールがかったポニテが少し乱れて、こめかみからは僅かに汗が浮かんでいる。