それをわたしはすぐに信じたし、それでこそこの街を統率する皇帝だとも思った。
だけど、このお方は……、飛鳥馬様は、こんなにも純粋な色を浮かべて笑っているのだ。
ずっと欲しかったおもちゃが手に入った子供のように、幼い笑顔で笑っているのだ。
最後にわたしの頬に添えていた手を頭へと持っていき、その上にそっとゆっくりと触れた飛鳥馬様の細くて綺麗な指をした大きな手。
わたしを撫でるその手は、少しだけ小さく震えていて、まるでわたしに触れることを怖がっているように感じた。
そんなわけ、ないのに……。
わたしに背中を向けて静寂と共に去っていく飛鳥馬様の大きな背中を見つめながら、わたしは放心状態に陥っていた。
あの純粋な笑顔が、頭から離れない。
わたしが今まで飛鳥馬様に対して思ってきたことは全て偏見で、あのウワサたちは本当はウソなんじゃないかって、あの笑顔を見てそう思った。
しばらくの間、踊り場に立ち尽くして飛鳥馬様が消えていった暗い渡り廊下の方を見ていると、どこからかわたしを呼ぶ高い声が聞こえてきた。



