冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



「……っ、へ」

「かわいすぎて、───襲いたくなる」



お、おそっ、襲う……!!!??


すきって言葉にも驚愕したけど、襲うって…襲うって…わたし、殺されちゃうのっ!!?


きっと、これがわたしの人生の中で最大の驚きと恐怖。


「赤くなるんじゃなくて、青くなる顔も、すごくかわいい」


この人、本物の皇帝だ───。涙も浮かぶほど怖がって、どうにかなりそうなわたしをかわいいというなんて。


手も足もブルブルと震えているわたしに、ゆっくりと近づいて来て桔梗が咲くようにふわっと柔らかく笑った飛鳥馬様。


これが普通の男の子が浮かべる笑みだったらなんと上品で芸能人顔負けの美しいものなのだろうと思うけれど、飛鳥馬様は違う。


どこまでも底がない真っ暗な漆黒の瞳の奥に、何かとんでもないものを隠しているような気がして、いつも警戒してしまうのだ。


つまり、そんな飛鳥馬様の優しげな笑顔は、子うさぎのわたしにとっては不気味でしかない。