冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



「───…一体、わたしに何をお望みなのですか」

「望みなんてものはないよ」

「………」



恐れの気持ちを必死に隠して、平然とした静かな声を発したわたしの言葉に、そんなウソっぽい返事を返した飛鳥馬様。


そんな飛鳥馬様を振り返ることは出来なくて、ギュッと唇を噛み締める。今でも心臓が震えてる。恐怖でどうにかなってしまいそうだ。


だけど……、



「──まぁ、強いて言うなら、君を一時の間連れ去ることかな」



小さな笑みをこぼしながら、だけど圧倒的な力の差を感じさせる気品ある話し声で、そう言い放った飛鳥馬様。


グッと強く拳を握り、唇を噛んだまま俯く。



「……っ、1時間、だけです」



次に出した声は、恐怖に耐えきれずに震えきったものだった。それに、飛鳥馬様が「……っ、え?」と動揺した声をもらした。


どうして、このお方は驚いたような声を出すの……?あなたが今言ったことは本気なんでしょ?と今すぐに睨みつけてそう訴えたくなる。



「どうしたのですか。わたしを連れ去るのではないのですか……?」