そう思いたいけれど、そう単純に思いきれない自分がいる。
「……彩夏、俺本当に彩夏が好き。だから絶対、何があっても俺から離れて行かないで」
君が時折見せる、その眉を下げた不安そうな表情がわたしの良心を煽る。弱った伊吹くんを突き放せないのは、付き合い始めてすぐの時も、今も、同じ。
「わかってるよ。絶対に離れない、だから安心して。ね……?わたしもちゃんと、伊吹くんのことが好き」
その言葉を聞いた伊吹くんは、項垂れるようにしてわたしの首元に顔を埋め、安心したようにほっと息を吐いた。
わたしの腰にぎゅっと腕を回して甘えたように伊吹くんが抱きしめてくるから、わたしも同じように両手を背中に回し、優しく抱きしめた。
ちゃんとって……、ちゃんと好きって何なんだろう。
「……っ、」
今は、今だけは、この優しい伊吹くんの体温が凄く切なかった。
わたしはやっぱり、伊吹くんに甘いんだ。
束縛とも狂気とも言える伊吹くんの愛情を怖いと思ってしまっている最低な自分と、それでも伊吹くんを突き放せない中途半端で優柔不断な自分。



