かつて、冷酷無慈悲な総長と呼ばれた男にも、長年恋い焦がれた女がいたらしい。


それは、低き身分であった庶民の女で、一同驚愕だった。


東ノ街の皇帝、飛鳥馬麗仁に愛された女───

それが、あの日の少女、七瀬彩夏だった。


赤のチャックスカートをはいて、皇帝の真ん前で小さく震えていた女の子。


傍若無人だった幼き頃の麗仁を、純粋な愛らしさと強さで温かく包んだ、強くて優しい女の子。


幸せに貪欲だった。

自分が疫病神だと信じ込んで、他人を不幸にさせる存在だと非難していた。


そんな考えを180度変えたのが、麗仁だった。


東ノ街と西ノ街はこれからも敵対関係にあるけれど、天馬伊吹という皇帝が、あの抗争後考えを改め直したらしく、もう2度と東ノ街に勝手に侵入したりしないと宣言した。


そこにもまた、彩夏を想う男の愛があるのだ。


麗仁と彩夏。


2人はまるで、生まれた時から赤い糸で繋がっていたかのように、その命がある限り、お互いを強く想い合う───。