東宮内(ひがしくない)高校。


ここは、東ノ街の中で誰もが知る一番の有名校。


そして、この街の住民のほとんどが通う高校でもある。わたしもその大勢の中の1人だ。


この東宮内高校が創立されたのは、この都市が2つの街に分割され、今からおよそ48年前に霜蘭花が現れた時だった。


つまり、この高校は霜蘭花が管轄する学校の1つであり、霜蘭花の幹部やその手下たちが通う唯一の“誰でも通えるわけではない”学校なのだ。


そんな特別な高校になぜわたしのような庶民が通えているかというと……。


それは、ここはご令嬢やご令息が通ってるのはもちろんのこと、わたしのような庶民も通えるように“普通科”という隔たりの中でなら入学を許されているからだ。


ちなみに、伊吹くんは私とは違って御曹司だから、クラスは別々だ。


本当に今でも、高校1年生の入学式のあの日、なんでわたしなんかに伊吹くんが告白してくれたのかが分からないのだけど。


学校に着いて、昇降口の下駄箱の所で自分の上履きを取り出し、それを履く。


わたしがそうしている間にも、普通科の生徒が次々に登校して来て、あっという間に昇降口が混雑する。


人の波から逃れるようにして昇降口から離れ、右に曲がって少し行ったところにある階段を上る。