冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



はい、分かりました。ありがとうございました、と丁寧に返事を返すのは隣の仁科さんで。


わたしはただ、その先生の話を聞いていることしか出来なかった。


麗仁くんの腕に沢山の点滴の管が繋がれて、酸素マスクを付けられている姿に心が痛む。


やけに広すぎる病室の一角で、わたしは麗仁くんが眠るベッド脇の椅子に腰を下ろしていた。

その隣には、当然仁科さんが立っている。


「麗仁くん……、お願いだから早く目を覚まして」



縋るように無理難題を押し付けてしまう。

そんな自分が不甲斐ない。


麗仁くんは今も1人闘っているのに、わたしだけ何も出来てあげられないこの状況が辛い。


……自分の力のなさを、実感するそんな瞬間。


時折麗仁くんの瞼がピクッと震えるのに、本人は一向に目を覚ます気配なし。