でも、おっしゃっていたとかじゃなく、神楽様は“零しておりました”と言った。
それはつまり、伊吹くんの独り言なだけ……なはず。
「きょ、拒否権がないなんて、あんまりです……!酷すぎますっ」
「へえ……」
わたしの言葉を聞いた神楽様の瞳がすっと細められる。そして、興味深げに顔を覗き込まれた。
「飛鳥馬麗仁と一緒にいすぎたせいで、自分の立場っていうのを忘れているみたいだね?だめだよ、敬わないと」
わたしを蔑む声は、ひどく冷たい。
冷めた瞳がわたしを静かに、だけど容赦なく射抜いている。その視線からすぐさま逃げたい衝動に駆られたわたしは、視線を神楽様から逸らす。
「もう、わたしと伊吹くんは別れました。これから先、2度と伊吹くんと会う気はないと思っていただいて大丈夫です」
「………、は?」
神楽様の仮面が完全に剥がれ落ちた瞬間だった。
今までは優しい好青年を演じていたようだけど、本性が現れてしまった。



