冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



ずっと見つめていると、この大きな青空に吸い込まれてしまいそうになる錯覚を覚える。

空を飾る雲が悠々と流れて、時の流れを感じさせる。


こんなにも大きなものを見つめていると、わたしの悩みなんて随分とちっぽけなものに思えてくるから不思議だ。


この青空から視線を外せば、すぐに現実が待ち受けているというのに。


「やっほー」


すると突然、そんな声がわたしの耳元で聞こえた。


それは、1度か2度、どこかで聞いたことのある声。

明るく弾んだ音程の中に、確かな闇を纏っている。


それがまた、背筋をゾッとさせる。


「……っ、!?」

「あは、驚いた?ごめんね〜、そんなつもりは全くなかったんだけどね」


ベンチに置いていたコンビニの袋が、かさりと音を立てる。

目の前にいる人物の姿に、幻覚でも見ているんじゃないかと疑ってしまう。


それほど、この人物がここにいるのは非常事態、だった。