冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



瞬間、パンの香ばしい匂いがわたしの鼻の奥をつく。

このBASIC BAKERYで働くのは、正直言って本当に楽しい。


ただのバイトとして働いているだけのわたしに、イチからパンの作り方を教えてくれる心さんという優しい店長がいて。


親切なスタッフさんたちに囲まれながら仕事ができて。


わたしは今、確かに少しだけだけど、静かな幸せを感じている。この空間が、わたしは好き。


このパン屋さんをバイト先に選んで良かったと、心から思っている。そして、いつなくなるかも分からない今を、わたしは精一杯にかみ締めた。


朝の9時から昼の13時くらいを過ぎた頃。わたしは昼休憩に入った。



「……ふぅ」


病院に併設されている中庭のバルコニーに設置されたベンチに腰を下ろし、自動販売機で買ってきたカフェオレを一口含んで一息つく。

そして、空を仰いだ。


わたしの視界には、どこまでも青が続く大海原のような広大な空。