冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



早く夜なんて明けてしまえ。

毎夜のようにそう思っていたけれど、今夜だけは、どうか時間が止まって欲しいって思った。


お父さんの温かい腕の中。わたしは1粒の涙を零して、気を失うようにして眠りに落ちていった。


──唇に触れた涙は、幸せの味がした。


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日曜日。

今日は、いつもと違う朝の始まり方だった。


病室のベッドの上で目が覚めて、シャワールームで顔を洗って、それから私服に着替え、お父さんと「またね」「また来るね」という言葉を交わして、バイト出勤した。


「綾乃ちゃん、こっちよろしく〜」

「はぁい、かしこまりました」



今ではもうすっかりと“綾乃ちゃん”呼びに慣れてしまっていた。だから、当然のようにそう返事をする。

会計をしていたわたしは、その役割を他のスタッフさんと変わり、厨房に入った。