冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



悪者にはなりたくない。ましてや、お父さんを責め立てるような娘なんかには、絶対に。


「お父さん、わたし、どうしよう。このままじゃ家に帰れない……っ、」

「彩夏、落ち着いて。大丈夫だから」



焦ったわたしの声に、お父さんが静かで落ち着いた言葉をかぶせてくる。

どうしてそんなに落ち着いていられるのか、わたしにはサッパリわからない。

だって、もう夜だ。完全にわたしたちの世界は闇に呑まれて消えてしまった。


「今日は彩夏も病院に泊まろう。さっき彩夏が睡っている間に看護師さんに宿泊の許可をいただいたんだ」


わたしの頭を撫でながら、凪いだ波のように穏やかな表情でそう言った。

お父さんの手は、とても大きくて、そしてちゃんと、温かかった───。


わたしはその日、病院に泊まることになり。


血の繋がった家族と、初めて夜も一緒にいられた。

今までは独りぼっちが当たり前だった、孤独で怖い夜。