冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



「……え?」

「……っは、いや、何でもないの」



お母さんは、わたしとお父さんが普通に暮らしていけるように、毎日自分の体を犠牲にして、売っている。

きっと相当気力と体力を使うお仕事だ。


好きでもない若者やおじさんたちに、毎日抱かれるのだから。そんなことを想像しただけで、背筋に悪寒が走った。


別にお母さんは浮気をしているわけじゃないから、ヘタに責め立てられない。


お母さんもお父さんも両方大切に思いたいのに、やっぱりお母さんに対しての嫌悪感が歳を重ねるごとに募っていってしまう。



「……彩夏。何か悩み事があるなら、何でも父さんに言っていいんだからね。いつでも聞くよ」

「うん、ありがとう」



……悩みならたくさんあるよ。

そう口から出かけた言葉は、すんでのところで抑えた。


お父さんに迷惑はかけられない。自分の悩みは、自分の力で解決しないと意味がない。