冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



父親の見舞いに、無理にでも来ようとしたことが今日までなかったのだから。


「…っちょ、彩夏!そんな謝ることじゃないよ、むしろ今日わざわざ会いに来てくれて凄く嬉しいって思ってる」

「……っ、ほんと?そんなふうに、思ってくれてたの?」

「そりゃ当然だよ。僕は彩夏の父親だからね」



控えめで、だけどとても綺麗な配置をしたお父さんの端正な顔が、ふっと優しく歪められる。

ずっと自分に会いにこなかった薄情な娘なのに、どうしてそんな表情ができるのだろう。


お父さんは、きっと何に対しても怒らないんだろうな。


そんなことを当然のように思う。


お母さんが水商売をしていても何も咎めなかったお父さんだ。本当は嫌なはずなのに、悲しいはずなのに、そういう素振り1つ見せずに、感情を押し殺しているんじゃないか。


それって、きっと凄く苦しい。

自分が愛した女性(ひと)が、自分じゃない他の男に毎日抱かれるのを、何も言わずに見ているだけだなんて。


「…っ、そんなの、あんまりだよ……」