冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。



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「はぁぁああーーー……」



わたしのバカ、アホ、落ちこぼれ……っ!!


自分で自分を罵倒するなどほぼ初めてで、子供じみた単語しか出てこないのが悔しい。


家に帰り、玄関に足を踏み入れた瞬間、今までは耐えていた恐怖への不安がどっと一気に押し寄せ、足の力が抜けてわたしはその場にへたり込んでしまった。


そこから放心状態が30分ほど続いて、首が尋常じゃないほどズキズキと痛みだしたから慌てて手当をした。


首にぐるぐると包帯を巻き付けた私は、お風呂の浴槽にためたお湯に首が濡れないように肩まで浸かっている。



「も〜、何なのよぉー……っ!あんなことになるのなら最初からシャー芯なんてもの買いに行くんじゃなかった……っ」



さっき外の世界で起きたことが脳裏をよぎっただけでさっきの恐怖を思い出し、温かいお風呂の中で身震いする。


わたし、明日からもちゃんと普通に穏やかに生活出来るよね……?


その不安だけがずっと心の中を渦巻いて消えてくれない。


本当に、こんな思いをしなければならないのなら夜の世界に足を踏み入れるべきじゃなかった。あの時のわたしは、シャー芯ごときにどうかしていた。