ジリジリと迫ってくる成瀬くんは、正直怖い。
控えめに言うけど、すごく怖い。
だってこんな状況、初めてだもん。
大抵の人は、わたしが告白を断れば肩を落としてすぐに去っていくのに。
「え、えっと……それは、」
「ほら、理由が出てこないんでしょ。ならいいじゃん。付き合おうよ」
ここは人通りが全くない旧校舎の踊り場で。
逃げ場ならいくらでもあるけど、走って逃げたとしても男子の足の速さには勝てないわけで。
ついには大きな手が伸びてきて、それがわたしの腕を掴もうとした。
────
─────…その時。
「───彩夏」
そこにいるはずのない人の声が、確かに聞こえた。
刹那、ふわっとした甘い香りに背後から包まれた。
それは今1番会いたくなかった、だけど助けを求める時に1番に頭に浮かんだ、優しい人の冷たい体温。



