『ふふっ、ううん。あなたの大事なハンカチを拾えて良かった!……あなたは、沢山の愛情を貰えているんだね』
それは、何かを渇望している羨望の眼差しに見えた。
俺を見つめ、優しく微笑みを浮かべる彩夏は、何だかすぐにどこかへ消えていなくなってしまいそうで……。
だから、迷わずに彩夏の細く綺麗な手首を柔く掴んだ。
『…ねぇ、俺たち、付き合わない?』
自分の顔が他よりも長けているのは自覚済みだ。
それなら、この無駄に綺麗な顔を最大限利用させてもらおう。
自分が1番格好良く見える角度で首を傾げて、彩夏の手首を握る手にぎゅっと弱い力を込める。
好きなんていう気持ちは、まだ芽生えかけの小さなものだったけれど。
それでも、その気持ちがまだ薄くても、彩夏が俺のことを好きでもなんでもなくても、俺はどうしても彩夏を繋ぎ止めたかったんだ。
こんなにも温かい優しさをくれた初めての人との縁を、簡単に切りたくなんてなかった。



